グループ会社AOSデータ社主催の「ジェロンテック×AI/DXフォーラム」レポート
~株式会社テムザック様・株式会社テクリコ様ご登壇~

X-Techのジェロンテック×AI/DXフォーラム September

 

2023年9月6日(水)、日経ホール&カンファレンスルームにて、AOSデータ株式会社主催の『X-Techのジェロンテック×AI/DXフォーラム September』が開催されました。
フォーラムには企業の代表や専門家ら9名が登壇し、介護やリハビリなど、それぞれの専門分野と関連したジェロンテック製品に関する講演を行いました。
中には、Husime.comでインタビューをさせていただいた株式会社テクリコ様によるMRによるリハビリトレーニングツール『リハまる』の紹介と、実際の介護施設における実証実験のリアルなお話や、馬乗り式の画期的な車椅子『RODEM』を開発された株式会社テムザック様によるジェロンテックやその他の業界においての多岐にわたる先進的な技術提供のお話もありました。
ジェロンテック体験会も開催され、参加した方たちは実際に製品に触れることで理解を深めていました。
この記事では、講演の一部についてご紹介します。

株式会社Z-works

創業者 取締役 小川 誠 氏

日本の介護現場において、現在深刻な問題として挙げられるのが介護職員の人員不足である。介護職員一人あたりにつき、受け持つことができる高齢者は3名との基準があるが、実際の介護現場、特に夜勤においては2名の介護職員で60名もの高齢者の見守りをしなければならないという現状が存在する。
このような課題に対して、z-worksが開発したのがライブコネクトである。ライブコネクトとは、施設内に設置された複数のセンサーによって室内の様子や行動を把握し、介護現場を可視化することができるサービスである。しかしこれ以上にライブコネクトが優れている点は、センサーで感知されたもののデータを蓄積することができる点である。例えば高齢者の転倒事故を取り上げてみよう。ライブコネクトは動作の異変を察知すると介護職員に通知するという機能を持つ。しかし、転倒が起こり通知を受けて事故の対処をするだけでは職員の負担や施設利用者の怪我リスクを回避することはできない。このようなリスクを回避し、続く転倒事故を起こさないためにも、蓄積されたデータから事故の起こり得る状況を予測し、事故のリスク要因を排除することが求められるのである。ライブコネクトは多様なセンサーを活用し、さまざまな指標によって異変を捉えるため、リスク状況の詳細な把握ができ、蓄積されたデータから解決策を打ち出す助けとなる。
具体的な効果として①夜間の見回りなど、ラウンド作業の頻度の見直し②通知機能による事故防止・重症化予防③室温監視による脱水症。熱中症予防、脳梗塞・心筋梗塞予防④睡眠震度・覚醒回数などのデータ活用による昼夜逆転防止⑤体動検知による褥瘡・発赤発症リスクの低減が挙げられ、介護職員の業務効率化に貢献するだけでなく、施設利用者の身体安全維持の強化など職員・利用者それぞれに利点をもたらすサービスだと言えるだろう。

株式会社テクリコ

代表取締役 杉山 崇 氏

 

株式会社テクリコは誰もが簡単に使える最先端のITを提供するというミッションを掲げ、すべての人が楽しみながら健康に暮らすことのできる世界を目指す企業である。今回テクリコが着目した問題は、リハビリテーションのドロップアウトである。従来リハビリテーションは医療施設内で作業療法士などの医療従事者とともに、淡々と同じ動作を繰り返すことによって行われる。しかし、リハビリテーションのメニューに抵抗感を感じること、リハビリテーションが定量化されておらず成果を実感しづらいことからリハビリテーションの継続に困難を感じている高齢者が多い。そこでテクリコはIT技術を用いて、日常を過ごしている空間の中でゲーム感覚でリハビリテーションを行うことができるMRトレーニングツール、リハまるを開発した。
リハまるはゴーグルを装着し、現実世界にCGを投影しそこに出てくるトレーニングメニューをこなすことによって利用者の運動・認知能力の改善を図る。日常生活の中でリハビリテーションを行うことで、軽微な症状を検知でき、トレーニングとしてもより高い効果をあげることができることが実証されつつあり、エビデンスの確立したリハビリテーションツールということができる。また、リハまる利用者からの使用感に関する評価も高い。
今後XR技術を活用した製品の開発を進めていくことにより、認知症予防を自宅で気軽におこなったり、そこで獲得したデータを医療機関にも共有することで、認知症の予防と早期発見を円滑に行うことができるシステムの開発も並行しておこなっていきたいと考えている。XR技術が家庭に浸透していくことにより、ジェロンテックの更なる発展に寄与することができるだろう。

東京都健康長寿医療センター研究所

福祉と生活ケア研究チーム研究員 今村 慶吾 氏

 

日本における高齢者の割合は世界でも突出しており、健康寿命と平均寿命の乖離が大きいことが課題とされている。つまり長生きはできるものの、健康上の問題を抱えながら生きている人の割合が高いということだ。そのため、すべての人が健康で長生きすることができるよう、東京都健康長寿医療センターは高齢者のウェアラブルデバイスに関する研究を進めている。
ウェアラブルデバイスとは手首や腕、頭などに装着するコンピューターデバイスを指す。東京都健康長寿医療センターは昨年11月より、東京都在住の高齢者を対象にウェアラブルデバイスを配布し、バイタルデータを記録・収集する事業をおこなっている。この事業によって記録されたデータは、図やグラフ化され、利用者自身が自身のバイタルデータを一眼で確認できるようわかりやすくアプリ上に表示される。この事業実施により、ウェアラブルデバイス利用者の認知機能・身体機能は高い水準を維持していることがわかっており、ウェアラブルデバイス利用による自身のバイタルデータの認識は、人々の健康維持に貢献していると言える。

AOSデータ株式会社

取締役 志田 大輔 氏

 

AOSデータ株式会社はデジタルデータの復旧に加え、AIによるデータ活用までを可能にするプラットフォームの開発をおこなっている。近年注目の集まっているジェロンテックにおいては解決課題の複雑性から、領域横断的にデータを活用することが求められており、データの収集の蓄積、そしてその共有までを行うことのできるサービスの需要が高まっている。
そこでAOSデータ株式会社は機密性の高いデータを安全に集積・共有のできるAOS iDXジェロンテックを開発した。AOS iDXジェロンテックはさまざまサービスとの連携を前提に開発され、集積データの活用までを視野に入れたデータプラットフォームである。
また、同じデータプラットフォームとしてHushime.comの運営も行う。生前、家族に対して自身の意思を表明しないまま亡くなってしまう方が多いという問題を受け、Hushime.comでは改竄されないブロックチェーンに遺言書を保管することができる。加えて音声入力によるデジタル遺言書作成にも対応しており、書字が難しい方に対してのサポートも充実している。これらのコンテンツを浸透させるためにもシニア世代向けに自身のライフストーリーを改竄されない動画としてクラウド上に残すことができるサービスを備えるなど、高齢者が楽しみながらデジタルデバイスに触れられるような工夫を施している。

ユカイ工学株式会社

代表取締役 青木 俊介 氏

 

ユカイ工学は「ロボティクスで世界をユカイに」をビジョンに掲げる企業である。ユカイ工学が定義するロボットは「人にやさしいデジタルインターフェース」であり、人の代替品として生産性の向上のために利用されるものではなく、人とデジタルサービスを繋げるコミュニケーションの媒体として再解釈を行った。
そんなインターフェースとして開発されたのがBOCCO emoである。BOCCO emoはスマートフォンと同等の機能を搭載し、リマインダーとしての役割を果たすだけでなく、スマホアプリや専用センサ、業務システム等と連携することも可能であり、これらとの連携によって機能を拡張することもできる。そのため利用者のニーズに合わせたサービスを提供することができる。
ジェロンテック分野においては、高齢化に悩む地域の地域相談員と連携し、高齢者の自宅にBOCCO emoとセンサーを設置し、BOCCO emoを通じた定期的な呼びかけを行う。加えてセンサーが一定時間動きを感知しないと相談員に通知がいくようになっており、高齢者の命の危険をいち早く察知することが可能だ。
また、脈拍や呼吸などバイタルサインを発するロボットや、なでると反応するクッションなど、まるでペットや赤ん坊と接しているような感覚に浸ることのできる癒し系ロボットの開発も行なっており、人々の生活を新たな切り口で豊かにする取り組みが進められている。

株式会社テムザック

代表取締役議長 髙本 陽一 氏

 

労働力の減少は深刻な問題である。2040年には労働力が1100万人不足するというデータがすでに存在しており、日本の労働社会が破綻する未来が少しずつ近づいている現状だ。そのような中で人々の命と生活を守るためにテムザックが開発を進めるのが「ワークロイド」である。ワークロイドは産業用ロボットとコミュニケーションロボットの中間に位置しおり、深刻な人手不足に悩む分野やIT化や別手段で労働力の代替ができない分野をターゲットにしている、まさに痒いところに手がとどくロボットである。
このワークロイドのうちモビリティ分野において、一躍注目を浴びたのがRODEM|ロデムだ。RODEMは従来の椅子型の車椅子とは異なり、機体後部から乗車し、シートに馬乗りになって走行する馬乗り式電動車椅子である。この画期的な形状の車椅子はベッドからの乗り降りの際、ベッドから車椅子に前後移動するだけで簡単に乗降することを可能にした。また利用者を高齢者に限定するのではなく、誰でも乗れる自由な乗り物として観光産業への参入も図っており、実際に京都市街でのテスト走行も行っている。
このように乗る人を限定せず幅広い層の方々が利用できるRODEMは高齢者だけでなくユニバーサルなデザインとしてモビリティのイメージを塗り替えていくプロダクトになるだろう。

 

まとめ

 このように、今回の講演では各社が考案した様々なジェロンテック製品やサービスが紹介されました。多くの課題を抱える超高齢化社会の日本において、人々が長く生き生きと暮らしていくための技術に、高い期待が寄せられていました。
当社は今後も、こうした日本の未来を支えるジェロンテックに関する様々な情報を発信していきますので、今回紹介した企業と併せて、ぜひチェックしてください。