「人生100年時代」の相続のコツ!
上手に遺言を残してトラブル回避! 

人生100年時代と言われる今日、高齢化の進展と共に認知症の患者数が増加しています。平成26年に発表された「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2025年の認知症有病率は最大で20%以上にものぼると予測されました。また、年齢が上がるにつれて認知症の発症リスクは大幅に上昇します。

高齢者の5人に1人が認知症になると予測される現在、私たちは健康面以外でも様々な対策が求められているといえます。

今回はそのうちのひとつ、「相続」について解説していきます。

参照:二宮利治 「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/141031/201405037A/201405037A0001.pdf 12頁,表3-4

認知症になる前に早めの相続税対策を

Q.なぜ、認知症になる前に対策をする必要があるのでしょう?

A.それは、認知症になってしまった場合、被相続人が認知症になってから行った各種法的な契約は無効となってしまうためです。被相続人に正常な判断能力が無いとみなされるのがその理由です。

これらの理由から、被相続人が認知症になる前に相続の準備を行っておくことが重要となるのです。

トラブル回避①遺言書の作成

遺言書は、相続準備として比較的ポピュラーな方法で、被相続人が亡くなった後の相続紛争を無くすためにとても重要なものです。

認知症になってから作成された遺言書は無効となる可能性が高いので、基本的には認知症になる前に作成をしてもらう必要があります。

しかし、法的に有効な遺言書を作成するのにはとても手間や時間がかかり、それを理由に遺言書を作成しないという方が数多くいます。

そこでおすすめしたいのが、デジタル遺言書( https://husime.com/digital-will/の活用です。

実はこちらのデジタル遺言書、現在は法的な有効性がありません。しかし、生前に何らかの形で財産を整理しておくだけでも、ご遺族の負担をかなり減らすことができます。難しく考えすぎず、デジタルを使って気軽にご自身の財産やご意思を見つめ直してみませんか?もちろん、このデジタル遺言書の内容を元に法的な遺言書を作成していただくことも可能です。

トラブル回避②任意後見制度

遺言書同様、財産に関するトラブルを防ぐために重要な制度として、後見人制度があります。

後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、このうち被相続人が認知症になる前に後見人を定めておける制度を、任意後見制度と言います。

 法定後見制度任意後見制度
成年後見人の選任家庭裁判所が選任本人(被相続人)が選任
後見の内容家庭裁判所の指針に従い

 

後見人が判断

本人(被相続人)が判断
契約の取消権ありなし
認知症を発症してからの

 

後見人選任

できるできない
本人の財産を損ねる行為(贈与等)できない本人の希望によっては可能

表に示したように、法定後見制度で決められた法定後見人は相続において大幅な制限が生まれます。これは、本人の不利益となる行為ができないためです。一方、任意後見制度は本人の判断能力があるうちに後見人を決定し、サポートの範囲を被相続人自身であらかじめ決めておけるので、そういった制限は少なくなります。

トラブル回避③生前贈与

最後にご紹介したいのが、「生前贈与」です。この生前贈与は、トラブル回避になるだけでなく、相続税対策にもなります。

例)

  1億円を相続した場合→1億円に対し相続税が課税される   

  1000万円を生前贈与していた場合→9000万円に対し相続税が課税される

⇒配偶者の有無や子どもの人数など条件にもよりますが、生前贈与するだけでおおよそ60万〜300万円の節税になるのです。

注意点

ただし、生前贈与には注意すべき点がいくつかあります。

・年間の生前贈与額が110万円を超えた場合贈与税が課される。

・毎年同じ額を贈与していると定期贈与とみなされて110万円以下でも課税対象になる可能性がある。

死亡前3年以内に相続人に贈与をすると、その分が相続税の課税対象となってしまう。

まだ健康だから大丈夫、と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、このように長い目で見ておかなければ課税対象となってしまう場合があります。かつ、前述の通り、生前贈与を含め認知症になってから行う法律行為は無効となってしまうので、早めに取り掛かることが重要です。

まとめ

人生100年時代と言っても、長生きすればそれだけ認知症のリスクは上昇していきます。認知症になると、健康であればできたはずの相続に関する契約もできなくなってしまいます。認知症になるリスクが誰にでもあるこの時代。ご家族のためにも、早め早めの相続税対策をはじめませんか?