遺言って誰でもできるの?「遺言能力」とは?

遺言ができる年齢

法律上、15歳以上の人は遺言ができると定められています(民法961条)。

日本の民法は「年齢20歳をもって、成年とする。」(民法4条)と定めて20歳から成人としており、20歳未満の未成年者の法律行為を一部制限しています。しかし遺言の場合においては遺言者の意思を尊重する必要性が高いことから、有効に遺言ができる年齢を15歳まで引き下げています。

遺言者が成年被後見人、被保佐人、被補助人の場合

1.日本の民法では、成年被後見人、被保佐人、被補助人による法律行為を一部制限する制限行為能力者制度というものが定められています。しかし遺言においては、遺言者の意思を尊重する必要性が高いことから、この制限行為能力者制度は採用されていません。

2.成年被後見人の場合
成年被後見人の方が遺言をしようとする場合、以下のことが必要になります(民法973条)。

  1. 成年被後見人が事理を弁識する能力を一部回復した時において遺言をすること
  2. 医師2人以上が立会いをすること
  3. 遺言に立ち会った医師が、「遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった」旨を遺言書に付記して、署名と押印をすること
    ※秘密証書遺言の場合は、封紙に上記の旨の記載をし、署名と押印をすること

3.被保佐人、被補助人の場合

被保佐人や被補助人の方々も遺言ができますが、遺言をする時において意思能力があることが必要です(意思能力については後述しています)。遺言者が亡くなられた後の段階で、遺言当時に意思能力がなかったとして争われるケースもあります。そのような場合に備えて、以下のような対策が考えられます。

  • 意思能力がある旨の医師の診断書を用意しておく
  • 遺言書を作成している様子をビデオ録画するなどして記録しておく

などの方法により、遺言したときに意思能力があったことを証明できる証拠を残しておくことをおすすめいたします。

遺言者に意思能力がない場合

「意思能力」とは 

意思能力とは、「自己の行為の結果を弁識するに足るだけの精神能力(事理弁識能力)」のことをいうとされています。もう少し噛み砕いていうと、自分が行った行為についてその結果を判断できる能力のことだといわれています。認知症や重い精神病を患ってらっしゃる方について意思能力がないと判断されるケースがありえますので注意が必要です。

遺言を行った時点において遺言者に意思能力がなかった場合、遺言が無効になります。

認知症等の場合は遺言できないの?

しかし、認知症や重い精神病を患っている方、あるいはその疑いがある方も、遺言できる可能性が一切ないというわけではありません。遺言をした時において、遺言の内容を理解してその遺言の結果を弁識することのできる意思能力(遺言能力)があったのであれば、有効に遺言をすることが出来ます。

もし意思能力が認められるかについて不安がある場合には

  • 意思能力がある旨の医師の診断書を用意しておく
  • 遺言書を作成している様子をビデオ録画するなどして記録しておく

などの方法により、遺言したときに意思能力があったことを証明できる証拠を残しておく方がより安全であるといえます。